mamuさんのバリスタライフ

コーヒーのにやまつわること、バリスタの生活について書いています。コーヒー片手にゆったりお立ち寄りください。

急冷アイスコーヒーの作り方を再考していく回

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急冷アイスコーヒーを淹れるとき、あなたはサーバーに氷をいれますか?何個いれますか?

 

急冷式。日本ではおなじみの氷を使ったアイスコーヒーの作り方。お湯でフィルターコーヒーを淹れて、熱々のコーヒーをたっぷりの氷に一気に注ぐ

 

書籍『コーヒーは楽しい!』ではアイスコーヒーの章の一節には以下のように紹介されています。

 

お湯出しアイスコーヒー

「日本式」の淹れ方で、コーヒーを湯で抽出し、たっぷりの氷で冷やして飲むという斬新なドリンクだ!「急冷式」とも呼ばれる。(コーヒーは楽しい, コーヒーを淹れる, p107)

 

世界では「斬新」らしい、ということが自分にとって斬新だったりしました。この本は(おそらく)フランス人筆者がフランス語で書いたものを日本人が訳したものであるので、日本に対する外からの視点が時々出てきておもしろかったりします。 

 

 

今日は氷について考えていきます。ちょっと長くなるし、マニアックな話にもなり、小さな些細な話になりそうです。コーヒーについて余程興味があったりしない人は以下おすすめしません。コーヒーのおすすめの淹れ方はこちらからどうぞ。

www.mamu.site

 

 

 

氷に関して、多種多様なものが存在します。溶けない氷、アイスキューブやアイスボールを使うという手もありますが、店舗で提供する関係上省きます。溶けない氷を使う場合は必要十分量を準備することとホットコーヒーと同じ分量で抽出することを軸にして考えるといいと思っています。コーヒーの節約にもなるし、冷凍庫の氷の匂いが好きではない人などの家カフェなどには最適かもしれません。

 

もっとも店舗で一般的な製氷機でできるタイプの氷を想定します。約20g程のキューブ型です。

 

前出の「たっぷりの氷で冷やす」という文言、かなりアバウトで幅のある表現ですね。書籍やネットで目にしてきた「たっぷりの氷で冷やす」という工程

 

➊サーバー内で完結するタイプ

➋グラス内で完結するタイプ

➌サーバー+グラスで完結するタイプ

 

 

➊サーバー内で完結するタイプ

サーバーに文字通りたっぷりの氷を準備しておいて、氷の上から抽出したコーヒーをダイレクトに当てていくタイプです。

 

『コーヒーはたのしい!』でも紹介されている方法で、「サーバーの半分まで氷を入れる」と指示があります。ここでもかなりアバウトです。説明を読む限りですが、抽出後もしっかり氷が残るほどたっぷり準備されているといいんではないかと思います。

 

抽出し終わったらグラスに移して完成です。グラスに移す際に別に氷を準備する場合は➌のような手順になると思います。書籍に完成!と書かれていないので、むしろ➌の流れになる方が多かったりするかもです。

 

 

 

➋グラス内で完結するタイプ

サーバーには氷をいれず抽出し、たっぷりの氷がはいったグラスに一気に注ぐタイプです。

 

グラスにたくさんの氷を準備していればいいだけで、「熱々の液体vs大量の氷」という感じで瞬間的な熱の全面戦争です。氷が多ければ多い程、各氷のサイズの減少幅は小さくなります。

 

➌サーバー+グラスで完結するタイプ

➊ と➋のあいのこのような方法で、どこでコーヒーを冷やすのかの比重はグラデーションがあるなという印象です。ざっくり二極化させると以下aとbになります。

 

a.サーバーに氷を数個入れ抽出して適宜冷やして、たっぷりの氷がはいったグラスに注ぐタイプ

 

抽出したコーヒーでちょうど氷が溶け切るくらいの個数をサーバーに準備します。97度のお湯150ml、コーヒー15gで、出来高120mlの抽出液に対しておよそ4-5個だったりします。微妙に溶けきらなくて小さな氷が残ったりするので、結局グラスに移すときに気になる人は氷を避けたりする必要があったりします。

 

逆に氷が少ないとあんまり冷えてない状態の抽出液をグラスに注ぐことになるので、グラス内の氷を小さくしてしまいます。

 

氷が少ないのでゆっくりと冷やされ、混ぜないとサーバー内がぬるくなる関係で氷が溶けなかったりします。

 

b.サーバーにたっぷりの氷を入れ抽出、溶け残った氷をよけつつ液体だけを、たっぷりの氷がはいったグラスに注ぐタイプ

 

aのように「溶け切る氷の個数」みたいなことを考えなくていい分、氷をよける手間と潤沢な氷が必要になります。

 

抽出した液体が氷に触れる度合いがaに比べて大きいので、急冷という名に相応しい方法ではあります。容易に安定したコーヒーがつくれるイメージが湧きます。

 

店舗で提供することを考えると、おいしさ、スムーズに提供できるか、氷がとけにくく持続的に冷たい状態が保たれるか...ということを考えたりします。透明プラカップで提供するので、氷の溶けにくさは飲むスピードや外気温や手からの熱で左右されてコントロール不可なので考えません。となると以下のようになります。

 

➊→サーバーに入れる氷の個数が毎回ばらける

➋→スムーズに提供できそう

➌-a→よさそう

➌-b→よさそうだけど、氷とる手間発生

 

 

➋と➌-aの比較をして本記事の再考を一時ストップしたいと思います。以下、便宜的に➌-aは➌と呼びます。

 

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お湯98度150ml、氷グラスに6個、サーバーに4個、コーヒー15gを準備しました。

 

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➋だと左のカップに抽出液120mlを注ぎ入れて完成。➌はサーバー内で冷たくなった抽出液を右のカップに注ぎます。➋と➌で使う氷の総量は同じにしました。

 

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➋は少しずつ抽出液がサーバーに注ぎ込まれて氷が徐々に溶けていきます。

 

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抽出後まぜないと氷はのこっていました。

 

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まぜるとほとんど氷は溶けました。サーバーに移してできあがり。

 

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➋はあつあつの抽出液を氷の上から一気に注ぎます。

 

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完成図。わかりにくいですが左が➌、右が➋です。氷の個数が違いますが、見た目は一緒です。

 

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こちらは上からの写真。誤差ですね。

 

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氷を抜いてみて、残った氷の大きさや抽出液の重量、抽出液の色味など比較してみましたが特に大きな違いというか有意な差みたいなものは感じられませんでした。

 

新たな発見は、カップの下にある氷ほどサイズが小さくなるんだということくらいでした。➋では1番あつあつである液体が当たる上の方の氷の方が溶けそうだなという印象でしたが、実際に下の方で抽出液と触れている時間が長い氷の方が溶けやすいという発見でした。

 

味に関しては...有意な差を感じれませんでした。化学的には明らかに急冷スピードに差があるので、全く別の飲み物になってるはずですが、誤差であるか自分の味覚が鈍感であるのか...。

 

今回はあまりはっきりとした正解みたいなものは見つからず、終始「へぇ」というような内容になってしまいました。メニューひとつひとつを再考することで、また再発見できることや改善できる点もあったりするので、なにも見つからなかったということが1つの見つかったという事実だったりします。

 

本記事を書きながらアイスコーヒーへの意識は実際少し変化したし、抽出の工夫に対してもモチベーションがあがりました。よりおきゃくさが喜ばれるようなアイスコーヒーつくりたいなと強くおもえたりしました。

 

最後までなんでもない珈琲屋さんの話にお付き合いくださいましてありがとうございました。また、アイスコーヒーへの質問をしてくださったお客様にも感謝です。ありがとうございました。

 

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