mamuさんのバリスタライフ

コーヒーのにやまつわること、バリスタの生活について書いています。コーヒー片手にゆったりお立ち寄りください。

ネパールでチキンモモ食べるならTUMMO

https://twitter.com/imamurayosinori/status/1062311651419058178

 

ぼくはモモなんて食べる気なんてなかった。このカフェは作業部屋として使っているだけだった。Wifiがある程度の速さで、作業のしやすいソファと机、そして長居しても煙たがれないぐらいの過疎度合い、この3つが揃う店はここにしかないのだ。量の多いというだけでアイスカフェラテを選んで長時間の作業をするのだ。ほんとダメな客である。嫌な人間でしかない。せこい考えは止まらない。飲み物結構高いし、なんかうまいもん食べてもあんまり値段変わんないんじゃないか...。そういや、よく他の客が食べているセイロに入ったモモ食べてみようかな。そんな文章にしたら読む気も失せる心情が出会わせてくれたのが禁断のチキンモモなのだ。人生はまことに皮肉にできているのだ。

 「今日はカフェオレじゃなくてモモちょうだい」。ぼくは10歳くらい年下の大学生バイトらしき女性店員に言った。目がぱっちりしていて非常に可愛らしい女性だ。大きな目を見開くというわかりやすい驚きの動きを見せて「珍しいですね。どの肉のモモにしますか?」カフェオレ1杯男だと思われているんだろうなと思いながら「どれが1番うまいの?」とひるまずにズケズケ答えにくい質問を浴びせる。意外にもあっさりチキンが1番うまいという彼女。明らかにチキンだけ値段がはる。聞いておきながら、ほんまかよ?という猜疑心が生まれたがそこは30歳の"良心"が『彼女のゆう通りに従え。聞いときながらダサいぞ。』という。ぼくは軽い笑顔で彼女の推薦を注文。1度は疑ってしまった彼女だったが、彼女はまさしく天使だった。

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 竹で編み込まれたセイロがテーブルに置かれた。フタに手をかけた瞬間にモワッと白い湯気が上がる。もやが晴れた奥にはツヤっとした白肌の三日月の形をしたモモが現れた。フォークでさすだけで、うまいとわかる。フォーク越しに伝わる弾力が異常なのだ。そんな事あるかよ、と言いたい読者の気持ちもわかる。だが、ネパールでモモを死ぬほど食べてきたぼくにはわかるのだ。指の感覚が、これはうまいよご主人さま、と語りかけてくるのだ。病気かよこいつ、と思うだろうが全然間違ってない。三日月のど真ん中をフォークで浅めに刺し、中の肉汁がこぼれてしまわないようにグリーンの葉のベッドから優しくすくい上げる。1度も食べたこともないのに初対面の相手の肉汁をケアするのがモモプロの意識の高さだ。1滴も逃さない、そんな気持ちがモモ素人とのモモへの態度に大きな違いを生む。ぼくは大きく開けた口に白い月を運んだ。ここから先は読者自身で確認してもらうのが1番だ。ただ、肉汁には気をつけろ、とだけ言って筆を置くとする。